9 曲がるということ(1)(2000/09/07〜11)

アルファに乗るということは、あるいはセッションに近い感覚かもしれません。

それもかなりユルい感じ。

思い出したように、一音だけ「ポーン」と鳴らすような そんな演ってる本人達だけにわかるような「間」。

コーナーを曲がっている時には特に強く感じます。

そんな間を感じるたびに、つくづくアルファというのが 「曲がる」という行為をとても 大切にしているクルマなのだと分かります。

カリカリのコーナリングマシンだと言うのではありません。

コーナリングの得意なクルマ、例えば日本車のスポーツカーに乗ると ちょっとヤル気を出せば、とてつもない速度でコーナーを駆け抜けられます。

そういうクルマは、決まって超扁平タイヤを履き 外側のサスを突っ張らかして、Gと戦っています。

アルファロメオのタイヤには基本的に50以下の扁平タイヤはありません(例外はある)。

それどころか、同時期の欧車の中では随分と小さな径のホイールを履かせています。

タイヤの太さに頼らずに曲がる。。。

これがアルファのコーナリングのミソなのです。

前にも書いたけど、アルファロメオが最も得意とするのは 左右のコーナリングが連続するつづら折りの道路 ワインディング。

例えば観光地などの山岳道路、丘を縫って走る農道。

そういう場所で、最高の性能を発揮します。

このことは、アルファの大衆車としての発展の歴史や それぞれのモデルの活躍した時代背景と密接に結びついているのです。

しかしそれは、プロのドライバーが発揮する性能ではありません。

決してレースのための速さでもありません。

レースのための速さじゃない…どういうことなのでしょう。

我々が乗るクルマの性能をそのまま煮詰めてゆくとレースカーになる…と 思うのが普通だし、実際、そういう方向性で作られたクルマは多いものです。

峠道を速く走るために、愛車を改造する人もいます。

その先にあるのは、ほとんどの場合サーキット仕様 。

つまり高性能なクルマの延長上には必ずレーシングがあるというのが普通。

確かに、ある程度のレベルまでは サーキット仕様というベクトルは 全てのクルマの挙動、運動性能の理想形に向かいます。

けれども一方、「サーキットと公道は違う」と言う人は多いものです。

けれども、クルマの走らせ方、速さまで含めて その本当の意味を知って言う人は、案外少ないのも真実。

人によっては、公道では速さなんか必要じゃないとさえ言います。

もちろんそんなことはありません。

公道であっても、速さはクルマのレゾンデートルの基本中の基本。

これを無視してしまえば、大八車にエンジンを付けても 「クルマ」と呼んでいいことになってしまいます。

(実際にそういうクルマが存在するけれど) 実際には、やはり公道でもクルマは速さを求められます。

でも、サーキットのそれとはだいぶ意味が違います。

公道で速いクルマとはどういうものでしょう?

公道では、走行ラインは狭く限られた1車線の中にしかありません 。

アウトいっぱいからインギリギリによって そこから一気に加速というようなアウト〜イン〜アウトの 乗り方ではなく アウト〜アウト〜アウト、もしくはイン〜イン〜イン というような変則的な乗り方を強要されます。

こういう条件下では、ストレートエンドで一気にブレーキをけ飛ばして クリッピングポイントでフル加速に入る… というようなアグレッシブな運転はできない事の方がほとんどです。

コーナーの途中に段差や凸 凹、溝があるのが当たり前。

それを避けて通る事は、公道では不可能、それを踏んでも挙動が乱れない事が必要。

不測の事態は、コーナリング中のブレーキングさえ必要。

あるいは同乗者がいるかもしれません。

トランクに荷物が満載されているかもしれません。

なるべく急激な荷重移動を避け、スムーズに加減速、あるいはスピードを殺さず 舐めるようにラインをトレースできる挙動が必要なのです。

あるいはクルマにかけられる時間やコストが限られているかもしれません。

どんなに性能が良くても、法外な価格のタイヤや 限界走行をしなければ効かないブレーキでは意味がありません。

例えばサーキットでは、全区間80km/hで走るクルマより ストレートを200Km/h、コーナーを40km/hで走って 結果、区間速度100km/hで走るクルマの方が速く走ります。

でも公道では、 ストレートもコーナーも全部80km/hで走って 区間80km/hのクルマの方が断然速く走ります。

もちろん公道であっても、サーキット的な乗り方をして速い人はいますが、それはルールを無視して「公道をサーキット的に使う」から速いのであって 「公道を公道として」使って速いのではありません。

それは人のウラをかいて割り込む事や、路肩を使って料金所を目指すのと何も変わりません。当然、自慢にもなりません。

公道では速さにも品格が必要なのです。

じゃあ、実際にアルファはどうなんでしょう? 他のクルマは?


INDEX  | NEXT

Copyright 2000 Chihiro SATOW. All rights reserved. Maintained online by chihiro@st.rim.or.jp