10 曲がるということ(2)(2000/09/12〜14)

注)
下の4つの実験は、人命に関わることがあるので
やるときは安全性に100%責任が持てる場所でやってくださいね。

1)
ストレートを80km/hぐらいで巡航し
アクセルは一定のまま
突然、左右それぞれ45度ほど
きゅっきゅっとステアを振ってみよう(一度だけ)。
そしてすぐにまっすぐに戻す。
ちゃんと戻るのが当たり前。
おつりを貰ったり蛇行を始めたりしたら
そのクルマは欠陥品だからすぐに手放すべきだ。
(危険状態の回避:アクセルを戻し、ハンドルから手を離す)

2)
高速走行中、ジャンプしそうな凸部やギャップを越え
クルマの進行方向に影響を与えた時
どんな速度でもステアリングに感触が
ちゃんと伝わっていて、クルマの姿勢を直せるか。
感触がないか、弱い感触だけで
クルマがあらぬ方向に向いたり
左右どちらかに車体が傾いて曲がって行くようなら
そのクルマはまともな設計でない可能性がある。
(危険状態の回避:アクセルを戻す)


3)
50kmぐらいで回れるタイトな低速コーナーに
タイヤが鳴くほどの状態で進入し、アンダーを出す。
アクセルは一定のまま
アンダーが出たところでステアを内側に切り増しした時
ステア通りにタイヤがコーナーをトレースできるか。
外側に膨らんでいく様な感じがあったら
そのクルマは危険な特性を持っている。
(危険状態の回避:アクセルを戻す)


4)
高速走行中、急加速したり法定速度を大幅に超えた時
ステアリングの遊びや重さに変化がないか。
ハンドルが軽くなる感覚があったり、遊びが増えたりする傾向があれば
そのクルマはパワーが足回りに勝ちすぎていて、かなり危険だ。
(危険状態の回避:アクセルを戻す)


上に書いたような出来事は、ちゃんとしたクルマに乗っている人にとっては「そんな事、今だにあるの?」と思うかも知れないけれど本当にあります。

それもかなり高額なクルマにもあります。日本車だけではない。結構有名な欧車にもあります。

クルマの安全性とは衝突安全性の事ではありません。

衝突安全性が高まっただけで「安全なクルマ」だと思いこまされないよう注意する必要があります。ダマされている人は多いけれど。

クルマは元来、危険なものです。だからこそ、事故が起きた後ではなく、起きないようにどうするかが大事。 その最大のポイントが「曲がる」 性能をちゃんとする事。

曲がるという性能は「止まる」や「避ける」の基本。
そしてそれは、上手いヤツだけができるのではなく誰にでもできる、つまりステアを操作するだけで回避できるものでなければなりません。
そして、それがサーキットなどではなく、公道でできること。

荷重移動とか、ライン取りとか、アクセルワークとか、そういうもっともらしい事を強要するクルマは相当にダメ印なのです。実は。

 

「イタ車は微妙なバランスの上に成り立っている」とは、イタ車オーナーの共感。
でも微妙なバランスって何?

その日の温度や湿度によって、車の状態が違うというのであれば
10年落ちの日本車や、整備不良のドイツ車でも同じことが起きるでしょう。
厄介なのは、アルファロメオというクルマ、今でも新車のころから
その日によって調子が違うといった古い車にありがちの事も起きるので
「バランス」と「調子」がごちゃ混ぜになること。
そろそろ10年を迎えようとしている75TSなんかもう…。

けれども、「イタ車のバランス」は実際のところ「車の調子」とは違う部分で起きることなのです。
これ、前話のハンドリングの話と密接な関係があります。

よく「ドイツ車は、高速道路は速いがコーナリングがからきしダメだ」というけれど、それは、ドライバーが無理なクルマの動きを強要すると挙動が停止に向かって働くという傾向があるからです。


電子制御でそういう挙動を作っているのではなくあくまでもそういう設計思想で作られているということ。

多くのドイツ車はどんなテクニックのないドライバーであってもクルマを安全な道具として使うことができるのです。

もっとも乗員にとっては安全でも周囲に安全とは限りませんが。

そのコーナーが危険だと感じたときに クルマは道の真ん中に「安全に」停止する事もあるから。

その時、ドリフトとか気合とか、そういう胡散臭いものに頼ったドライビングは無理。クルマが曲がれる道はクルマが曲がり、クルマが曲がれない道はクルマが曲がらない。

まさしくドイツ車は、機械として独立した存在なのです。

一方、イタリア車、特にアルファロメオの場合は一言でいえば、クルマが曲がれる道はクルマが曲がり、クルマが曲がれない道は人が曲がる。

足回りとエンジンパワーの限界がクルマそのものや 走る場面やコースやドライバーの状態で全く違ってきます。

例えば、人もクルマも調子がよくてぴったりと息が合っていればそのクルマは恐ろしくよく曲がるクルマになるし、逆に、車だけが性能も調子も良くても人が調子悪ければそのクルマは
まるでオンボロのように見事に曲がりません。

それはクルマや人の状態に限らず、路面の状態やコースにも左右されます。

Alfettaや75TSは、前話の条件を全てクリアしながらそれが何km/hまで可能なのか、実のところ分かってなかったりします。

例えば、GOLFでは90km/h、BXでは80km/hまでは大丈夫だったコーナーも、アルファだと、70km/hでも死にそうに恐ろしかったり、逆にメーターが120km/hを指していて、やっぱり心臓が口から出そうになったします。

 



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