ある男が、女にフられた。
アメリカ製の小さなオープンカーを買った。
V8ではないが、マジメな男だったから周囲はちょっと驚いた。
本人も思い切ったようだ。
「明日から、オレは不良になってやる!」
けれど、彼の傷心は癒されなかった。
不良にもなれなかった。
毎日毎日、まるで一人きりで新婚旅行に行って
レンタカーを乗り回してるようだった。(そういう車種だったしね)
彼は何を選択すべきだったのか?
愛する女にフられるってのは人生で2番目か3番目に辛い事だと思います。
そしてその傷心をクルマで癒すってのは、かなり手だとも思います。
男にはいつも道具が必要なのです。
けれども、 クルマという道具は必ずしも男の味方をしてくれるとは限りません。
オーナーを無視して、助手席や後部座席に媚びへつらうヤツもいるのです。
クルマには「巣」なクルマと、それ自体が「女」なクルマがあります。
どっちがいいとか悪いとかじゃなく、つがいの片方が去った時に「巣」なクルマは辛すぎるのかもしれません。
未練酒と、過ぎゆく青春の涙に溺れたいならそれでもいいのですが
でもそれじゃあ、全然ハードボイルドじゃないですねえ。
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