クルマにおける本質の変化

 敢えて「クルマの本質とは何か」という事は明言しません。しかし、現在の四輪車の道具としての捉えられ方は、少なくとも往年のクルマの美点とは少し違うところにあるのは確かです。そういうユーザーの指向の変化とアルファの顛末とは無関係ではないように思います。
 自転車やオートバイは、クルマとは少し違い、スポーツと密接に関係しているおかげで「用途」が細分化され、どんなに走りを突き詰めても市場からは駆逐されず、むしろそれぞれの個性を発揮しながら発展しています。クルマは大量生産化の末、あまりに一般化したために市場原理が「日常」でのみ語られる様になり、一見進化しているように見えてむしろ「人間が使う道具」という範疇から遠ざかっている様な気がします。むしろそこには「移動」という項目に括られた末の、出口のないコンセプトの煮つまりを感じます。280馬力をトラクションコントロールで制御するラグジュアリーセダンや、オフロードを走れないRVの存在というのはとても象徴的です。
 クルマもおそらくは大量生産の時代を終える可能性は非常に高いと思われます。もちろん幾つかの大メーカーは「実用車」を大量生産し続けるでしょう。しかしその淘汰は既に始まっており、これからは電気自動車などの台頭を機に、実用車とクルマのカテゴリー分けは細分化が進み、昔なら「バックヤードビルダー」と呼ばれた零細企業のクルマ作りもかなり広まる可能性があります。そこで初めて「走り」という定義が、クルマの本質のひとつとして認識されることでしょう。その兆候は、未熟ながらも既に出てきつつあります。



本文に戻る