75の低速トルク

 Alfettaのギアも75TSのギアも、走り始めた時の第一印象は「ナンジャコリャ?」
 いや、シフトフィールの事ではなく、ローのギア比の事。Alfettaのギア比は、リバースよりもローという、恐ろしくテンションのきついギア比だった。75TSのそれは、Alfettaからは想像もつかないほどハイなのだ。逆さまコンビの2車。
 75TSは、スペックではエンジントルクがかなりフラットなはずなのに、発進の際のクラッチミートがもの凄くしんどい。都内の渋滞に入ったら絶望的に疲れるだろう。いきおい回転数を上げてクラッチミートすることになるから、「バカっ速」のドライビングからは決して逃れられない。
 ただ、道が空いてさえいればローで加速する時間は長くなったし、Alfettaのように「1速は発進専用」などという負け惜しみを言わずに済む点はありがたい。
 逆に2500〜3000rpmを超えてしまえば、感覚的には硬質なトルク感がズドーンと、ほとんどイエローゾーンまで続くから(実際には4000rpmがトルクピーク)、これはこれで「非力を回転で稼ぐ」というアルファ特有の「解」だということも言えるのかもしれない。
 それを実現しているらしいのが可変式バルブタイミングだ。最初これは低速時でのトルクアップを狙ったものだとばかり思っていた。雑誌などでも「低回転でのトルクやエミッションコントロールを確保するため」と書かれていた記憶がある。それがオフィシャルコメントだとしても建て前としては立派だが、まさかアルファがそんなものを本気で優先させる訳がない事は、アルフィスタを自称する人なら気付く。乗って分かるのは、とにかく「常用回転域でのトルクが均一で出る」であって、日本のストップアンドゴーで使える様な低速トルクは皆無だということ。そして「常用回転」の考え方が実にイタリアの実用車、いや、アルファらしい。もっともこの極端さが好きでアルファに乗っているようなもんだけど。



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