21:アルファはなぜ楽しいか(1)(1997/12/03) |
明確にアルファが「たのしー!」と思う瞬間がいくつかあります。 コーナーを抜ける時に、車重が消えるような瞬間.....。 表現は難しいのですが、言葉にすると、コーナリングの途中から後半にかけて、羽が生えたように軽くなってすぱーんと次のコーナーに向けてクルマが正視してドライバーを待っているという感じです。ちょっと今までの「買ったまんま仕様」のクルマではこれを味わった事がありません。 極端な反対例を言うと...例えばとある4WDなスポーツ実用車でしたが、コーナーの最後の最後まで挙動制御のために、神経のどこかを余分に残しておかないとドライブできない...というような、見事な足廻りデチューン車でした。アルファにはそれがなくて「早く次の事やれっ!」とせかされているような、そんな感覚。 よくアルファは年代に限らず「ロールが深い」とかいわれます。もちろんAlfettaもロールは深いのですが、それはクルマのサス性能に頼って曲がった時や、コーナーの脱出時に何もしないと極端に深く感じられるだけで、よりポジティブに曲がろうとするときにはそういう感覚(「うわぁ〜ロールきつーい」と焦る感じ)は一切消えてしまうというのが僕の印象です。おそらくこの伝統的な感覚はFFになってから久しい155にも156にも残っていると思われます。 「いや、ちょっと待て、いくらドライバーがタコでも(タコは普通運転はしないが)ちゃんと曲がり、止まる、フールプルーフなのがイイクルマじゃないの?」と思うかもしれません。もちろん!僕はアルファのフールプルーフ性なんてハナから論じるつもりはありません。30年以上も前に、そう、日本車のボンネットがやっと80km/h以上でも開いたりしなくなった頃に、アルファは既にドライバビリティに関するフールプルーフ性は完全にクリアしています。 脇道にそれますが実は...クルマに詳しい方には読み飛ばす類の話で気が引けますが、ちょっと前の日本では「誰が運転してもちゃんと曲がってちゃんと走る」という基準を大いに気にする事がどうしても必要だったのです。だから今でもそういう伝統でクルマの基本性能が語られていますが、アルファだのベンツだの、果ては2CVまで、日本に入ってきた欧車の殆どは、そんなものはとっくのとうにクリアしてのレベルで「ドライバビリティがどうだ」とか「ブレーキがどうだ」とか言われていた訳です。ところが日本車は、なんと1990年代に入るまで、大真面目に「ブレーキは効くか」とか、「パイロンテストがクリアできるか」とか論じないといけないクルマの方が多かったのです。(最近、またヘンな挙動をするクルマが増えてきみたいだけど)勿論、それらの首に初めて鈴を付けたのは徳大寺氏というのはあまりに有名な話ですが、とにかくフールプルーフが満たされない頃の日本車の恐ろしさといったら、僕も随分と危ない目にあいましたがそれはそれは筆舌に尽くし難いものがありました。 日本の一般道の法定速度は基本的に60km/hと決まっています。だから殆どの人は、かつての日本車の恐ろしさに気付かずに済みました。「そんな挙動を起こすのは、オマエが乱暴な運転をするからだ」で済んでいた訳です。だから法律を破ってでも安全運転をしたかったら、あるいはレースをやりたいなら、違法改造(ダンパーを替えたり、スプリングレートを替えたりも、かつては違法だった)してクルマの限界を自分で上げるしか方法がありませんでした。ちなみに、今でも気を付けたほうがいい国産車はいくつか残っています。特に「女性向け」とか「ベーシック」を謳い文句にしているクルマで、危険回避の行動を取るよりエアバッグを開かせた方がよほど安全なものが、どれとは言いませんが少なくとも5〜6車種はあります。 とにかく、アルファの「イイクルマ悪いクルマ」の基準は、そういう限界を超えたところでの話であって、普通のスピードと普通のコーナリングをしている限りは安全に曲がれる事は当然として、そこを超える、あるいは超えそうな時、自分がポジティブにクルマを操ろうとした時の応答が、あまりに今までの僕のクルマの体験(いささか貧弱ですが)のイメージを超えていました。 その訳は次に続く... |