20:間違いだらけのクルマ(1997/12/03)

 もちろんAlfaと言えども現代車とその性能を並べようとするのは無茶というものです。コーナリングの性能も加速度も、数字の上ではもはや遠い過去のものです。いや、現代だけでなくどうやら昔から言われていたようですね。よく、アルファの歴史やアルフィスタの話の中に「アルファはいつでも他のクルマに比べて2〜30馬力は足りない」というのが出てきます。僕もAlfettaを初めて運転した時、やけにパワーウェイトレシオが高すぎる様な感じを受けました。gtv2.0なんか9kg/psもあります。パワーウェイトレシオは低ければ低いほど速くて、スポーツカーと言われるクルマは軒並み5kg/psとか4kg/psなのに、アルファロメオは最新のものでもせいぜい7kg/ps程度です。これはスポーツ車というよりはファミリーセダンの水準です。

 それと、最近のアルファには、もれなくエアバッグが付いてきたりして結構安全にも気を配っている様ですが、Alfetta以前のアルファといったら、危険がタイヤ付けてカっ飛んでいる様なのばかりです。ボディはあるだけもうけもの、できれば無いほうが軽くていいやぐらいの付属品、ましてヨーロッパ車だからといってドアにサイドビームなんか期待するのは間違っています。正直言って、これに家族を乗せて走るというのはかなり蛮勇ものです。なのに何故アルファなのか。

楽しいから。

 よく「アルファには運転した者にしか分からない感動や快感がある」と聞きますが、僕は一度もアルファを運転してて感動した事がありません。むしろGOLFやシトロエンに乗っていた頃の方がたくさん感動していた気がします。だいたい「走る」ということ自体ですら、今の代表的な日本車のレベルから考えたら155ですら太刀打ちできません。(少なくとも我々一般ドライバーが漫然と乗れば)。同じ「走る」でも、予定調和的に走りたければドイツ車があります。これは誰が運転しても超高速、超安全に走れます。根本的に他の国とはクルマに対する考え方が全然違ってる事は、ドイツ車のオーナーになったことがある人ならよく分かります。ドイツ車のクルマ基準で考えると、世界中のどのクルマも幼稚に思えてきます。
 一方、仲間と楽しくドライブするだけならフランス車やフィアットがあります。パンダの底抜けの明るさと言ったら、それはもう乗って見なければ絶対に分かりません。僕は機会がある度に「一生に一度はハイドロのシトロエンに乗った方がいいよ」と、クルマ好きの友人には言いますが、パンダも、ぜひとも2〜3人でその辺の田舎道をトコトコ走って見てください。900ccでも1100ccでも、マニュアルでもECVTでもパンダはパンダ。クソマジメなドイツ車が滑稽に見えてきます。FIATっていうのは、ああいう安っぽいクルマに、宝石の様な輝きを感じます。

 さて、アルファはそのどれにも手が届きません。なのにアルファは楽しい。なにが、どう?

 きっとこの理由は、古いアルファに乗っている人にも新しいアルファに乗っている人にも分かってもらえる事だと思っているのですが。



21に続く