15:何を買っても苦労する(1997/11/18) |
ここでまたしても突然、僕は何かがふっきれました。クルマを中古で買う場合、それがもし世界に1台しかないような稀少なクルマでない限り「なるべく程度のいいものを探す」ということは誰でも知っています。しかしその基本に忠実すぎると、クルマ選びはとってもつまらない「消去法の作業」になってしまいます。それなら省エネで荷物がワンサカ積めて、妻にも運転できるクルマにすればいい。もう、眉間に皺を寄せてクルマ選びをするのはヤメです。 「アルフィスタが完調の愛車を手放す訳なんてないじゃないか」 そうそう! 細かい電気系統の不調から始まり、果てはエンジンブローまで、何か手放さなければならない事情があったからこそ、アルファはそこに「売り」に出されているのです。とはいっても、もっとエキセントリックなアルファ、もっと走りのいいアルファに出会うために、今までの愛車を惜譲することは考えられますけど。 僕の当時の情報収集能力と、知識のレベルでは「どうせ何を買っても一緒だ」アルファへのパッションもハンパなまま最初から「程度のいいアルファ」を探すだなんて、何十年かかるかわかりゃしない。とにかく 「オレはアルファに乗るのダ!」 ...なんか、イタ車というのは、購入する前からパッショネートになることを要求されている様です。 まあ、そうは言っても最小限の理性は残しつつもそんな訳で、初心者らしくまずはなるべく安く現時点でエンジンだけはちゃんと回るアルファを探そう...と考えた途端、僕はほぼ完全にAlfettaシリーズに的を絞りました。唯一、完調の状態を知っていて、過去にステアリングを握って実際に感動できたクルマだという理由の他に、思いのほか相場が安かったからです。実はここまで至るまで、僕はAlfettaはかなり高いのではないかという誤解を持っていました。しかし少し調べて見ると、今だに高いのはgtv2.5V6だけで、他の車種はプレミアム付加的な値付けはほぼゼロでした。中古相場のAlfettaに乗れるのはもしかしたらここ数年が限度じゃないか? クルマ選びにはいつも決まって不思議な事があるものです。それは、僕のクルマ選びが、「コレが欲しいから探す」ではなく、「自分が今欲しいと思うクルマの要素は何か」から始まるという事に由来します。そうして紆余曲折いろいろ悩んだ挙句、次第に無駄な部分、例えば雑誌や巷の流行に知らず知らずのうちに影響されていた雑多な我がままが削ぎ落とされ、自分の求めているもののミニマムが見え出す瞬間があります。 そして今回も不思議なことに、すぐにイギリス仕様のちょっと変わったgtvを見つけたのです。それが今の愛車です。排気量は2000cc、マイナーチェンジ後の'82年式の赤でした。これがかなり強力な選択肢だという事に気がつくのにさほど時間はかかりませんでした。 ところで97年の現時点でも、FRの歴代アルファの中で最も相場が安いのは、AlfettaシリーズとGIULIA最終期の2000ベルリーナ、そしてSUDに絞られているようです。そして、これらはどこのショップでもかなり「投げやり」な扱いを受けている印象が強いようです。購入後はかなりの出費も覚悟しなければなりません。 アルファなどの古いイタ車などを買う際、雑誌や書籍などに載っている購入アドバイスではよく「エンジンやメカはいつでも直せるが、ボディは出費がかさむのでボディに錆のないものを選べ」というのが常識になっているようです。しかし、僕はここでも前述のいきさつから、それとは逆の見方と推測をしていました。その推測とは... 「そのクルマの素性を完全に把握できない限り、75以前のアルファの場合、ボディが完璧なものが存在するとすれば、それは105系以前のレストア済みのものの確率の方が断然大きい。(現時点でレストアを受けたAlfetta系を探すのは国内では困難)もし仮に板金レストア済みであれば、それはベラボウに高い。逆にそれが安価で存在しているという事は、レストアとは名ばかりの応急処置でごまかされているか、ボディ以外に深刻ないわくつきが考えられる。まして素人には、それの深刻度は一切判断がつかない。購入してからなるべく入院させないためには、よほどヒドいのは避けるとしても、外内装の善し悪しにダマされず、少々の腐りには目をつぶり、相場とのズレと整備記録とメカニカルな音に耳を済ますべきだ」と。 そして、この推測は、後にAlfetta選びにとっては特に重要なポイントであるという事が、今の愛車の状態の良さと、とある大先輩のアルフィスタのクルマ選びの秘訣を聞くに至って確信に変わる事となりました。僕は今でもそうして良かったと思います。いえ、実際にはそれでも結局苦労する事にもなるのですけど、その話はおいおい。 |