昨年の夏あたりから、ルーフエアコンを回すと、「シャンシャンシャン」という、金属の擦れる音がするようになってきた。
ファンがどこかに干渉しているのだ。
音がするたび、
何度か室内側からエアコンを開けて見たが、構成部品のほとんどが室外機(屋根上)
からでないとアクセスできないという事が分かっておっくうになり、室内機を押すと音がしなくなったりもしていたので、ダマしダマしそのまま使ってはいた。
けれども先日とうとう、外出先でネリに留守番させようとエアコンのスイッチを入れても、モータが回らなくなってしまった。
ファンが完全に、どこかの部品につかえてしまったみたいだ。
しかたがないので屋根に上って修理することにした。
コーチメンにくっついているルーフエアコン(実際は単なるクーラー)は、Coleman MiniMachという、コールマンのルーフエアコンの中ではもっとも小さなタイプ。小さいといっても、室外機は一抱え以上もある巨大な樹脂カバーに覆われている。カバーは12mmの袋ナット2本で止まっているだけ。すぐに外れる。ただ、外した後のカバーはちょっと大変だ。狭いコーチメンの屋根の上では、カバーをずらしておくだけでもかなり場所をとる。
ルーフエアコンの仕組み自体は実に単純だ。「へえ!クーラーってこんなに簡単にできてるんだ!」と感嘆するほど。
それをさらに単純化して描いたのが下のイラスト。コンプレッサーはモータの脇にちょこんとのっかっている(図では省略)。
コンプレッサとモータ以外の各部品は鈑金で覆われていて、テーパビスで閉じられているだけなので、おおまかにならどこの部品にもアクセスはできる。
この個体は過去に何度か開けた形跡があった。
ファンが干渉していたのは、エバポレータ側の板金製のガイドだった。
ファンとモータのシャフトはヘキサゴンのボルトで固定されているのだが、これが何かの拍子にを緩み
ファンがどんどん前にせり出してきて、前ガイドと干渉してしまったらしい。
この固定ボルト、
手持ちのヘキサゴンレンチで回るかと思ったが、あいにくインチサイズらしく、手持ちのどれも合わなかった。
どうやら過去に開けられたのは同じ理由のようで、この固定ボルトが力の入りづらい場所にあるために、
完全に固定できなかったようだ。
ただ、手で押したりしただけではびくともしないから、あるいはもともと経年で緩むものなのかも知れない。
ファンをモータ側に押し込んでしまえば修理は完了なのけれど、あいにくガイド側に手や工具が入り込む隙間はない。
そこで、
下図のように、パイプレンチをシャフトに噛ませて、モータ側からハンマーで「カンカン」と十数回ほど叩いてやる。
すると、赤い点線あたりまで、ファン本体が戻ってきた。
スイッチを入れて試運転してみると、きれいにシロッコファンが回りだした。
ファンが前進してしまうのは、固定ボルトが締まりきらないだけではなく
モータのシャフトの先端に支持点がないのと、ファンが偏心していたり精度が悪かったりして
ファンが振り回されて前に前に抜けるようにベクトルが働くからだ。
この辺は完治できないだろう。
いずれまた前進してきてガイドと干渉しはじめるだろうけど、少なくとも1シーズンは保つはずだ。
次に修理するときは、インチサイズのヘキサゴンレンチと、ネジの緩み止め剤をあらかじめ用意しておこう。
それにしても、昨年のエンジントラブルやFFヒータのトラブルの時も感じた事だが、アメリカの機械モノはバラしてみるたびに感心する。
何に感心するかというと、例えば日本製の機械モノの場合は、
素材や製造システム、部品の品質管理、組み付け精度を完璧にし、さらに要メンテナンス箇所を極力排除することで、「絶対に壊れない」機械にしているのに対して、アメリカ製の機械モノは、素材や部品の品質、組み付け精度が悪くても、あらかじめそれを包括するような構造、あるいはなるべく壊れようがない構造にしておいて、たとえ壊れた時にも、原因さえ突き止められれば、特別な部品調達やノウハウなしに、ざっくりした応急処置が効くという点だ。目的が全く同じなのに、そこへ到達しようとするアプローチが全く違うのだ。
結果的に、日本製なら1/3の容積で済んでしまうようなガタイになってしまうのがアメリカ製。でも手が入りやすくていい。
もちろんこれらの事は、単にその国の工業基準や業界基準に基づいてそうなっているだけの話なのだけれど、そういう基準を生むのは作り手の気風でもある。こういう点において日本製とアメリカ製は昔も今も完全にヨーロッパ(EU)製を凌駕しているなあと感じる。
ここ10年来のEUの機械モノは、素人がいじると神経と金をいたずらにすり減らすようにできている。ダメになったものは「交換」するしかない。これにはドイツの工業基準やリサイクル法が大きく影響していると言われている。もちろん日本製もその傾向はあるのだけれど、部品の最低品質保証がきっちりしているので、極端な長寿命か事実上の無交換を実現している。EUにはそれがない。
けれども、キャンピングカーや船や飛行機のように、古くなっても酷使しなければならない、命に関わる部分をたくさん持っている道具の場合、「機械は壊れるものだ」とか、単純に「壊れたら交換すればいい」では通用しないのである。この考え方の違いは、もしかすると補給線の延びきった戦争ばかりしてきた国と、都会や田園の中で戦争をしてきた国の違いなのかもしれない。
2003.07.26
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