<ゴルビー手術(1997/05/10)>
5/10(土)、ゴルビーが手術を受けました。午後9:30から午前0:30頃まで、約3時間の大手術でした。
それまでの数日間、「しこり」との推測の元に、飼い主の希望で取り敢えず内服薬で様子を見ていましたが、一時的に食欲を取り戻したものの(肉を数切れ食べただけ)、その後下痢を起こした以降は一向に回復に向かう兆しもなく、絶食状態も合計2週間に及び、衰弱が進む一方でした。尿漏れもだんだん激しくなり、ゴルビー自身が望む時には一滴も出ず、横たわっている時に絶えず垂れ流しという状態が日増しにひどくなっていました。他にもいろいろ懸案があって5/10になってやっと獣医に行き、当日の試験開腹手術が決まりました。
開腹して分かった大きな点は、何らかの奇形で、膀胱が二つ存在するという事でした。獣医の先生も初めて見る例だと驚いていました。さらにその二つの膀胱のうち、本来ないはずの奇形膀胱がパンパンに膨れ上ってメロン大までになって、腸や本来の膀胱、さらにそこからの尿道を広い範囲に渡って圧迫していました。これらが「しこり」という触診を推測させたようです。そして排尿を妨げていた訳です。胃は完全なアトニー(弛緩)状態、他の組織も圧迫や強制的に伸び切っていたため、組織がもろくなって出血状態。腸や尿管は完全に閉塞状態、本来の膀胱も行き場を失いながら尿をため込んだまま膨れ上っていたのです。剃毛時に僕も触診させてもらいましたが、下腹部というよりもへその上、胃付近から陰嚢付近まで、ガチガチの状態でした。「しこり」と診断されても全くおかしくないものでした。
奇形膀胱は、それが腎臓からきているのか膀胱同士で枝分れしているのか最後まで判明付きませんでしたが(獣医談)、内容物は不透明の褐色の尿らしき液体で、尿が汚れているという事は、腎臓からではなく、尿管のどこかで枝分れしている可能性が高いとの事でした。この奇形膀胱は、そこからの尿道が見られず、長い間に尿をため込んでタンクの様な状態になった訳です。どういうわけで奇形膀胱に尿が流れ込んだのか不明ですが、思い当たるフシは十分にあります。ここからは僕の勝手な憶測ですが、この1ヶ月間、飼い主の身の回りにいろいろ起きたため、朝夕の2回する排尿排便を兼ねた散歩が、不規則になっていた事実があります。ゴルビーは...というよりもイヌは、散歩の時間が来るまで、大変がまん強く尿意を抑えます。長いときは丸一日近くもがまんしてしまいます。この時に、本来の膀胱が収納しきれなくなった尿を、奇形膀胱が吸収したという事が考えられるかも知れません。獣医の先生曰くは「かなり長期間ため込んだものである可能性が高い」と話していましたので、僕の憶測が正しいとは言い切れませんが、いずれにしても、蓄積されたものの容積を大幅に超えていた事は確かで、今回の不規則な散歩のスケジュールにその原因の一端があったということは真実だと思います。何にしても飼い主の責任は重いです。ただし、おそらく遅かれ早かれ開腹は必要だったことでしょう。これが10歳とかの老犬でなかったことが幸いです。
奇形膀胱はその場で切除し、縫合、先生の話では「80%回復するでしょう」との事でした。今後、奇形尿管の破裂や尿の腹腔内への漏れが起こらない限りは大丈夫だそうです。ここ数日はまるで死に際を悟る様な行動まで見え隠れし(飼い主がそう思っているだけかもしれないが)妻が自分の父親を癌で亡くした時とシチュエーションや状況がダブったりもし、一時は僕も覚悟していたので、先生の言葉を聞いたときは、心から喜びました。
もちろん、まだ術後の経過があるので予断は許しませんが、開腹するまで疑われたのは、僕の素人推測も含めると、感染症、肝臓障害、癌、良性腫瘍、前立腺肥大症、腸炎など、実に様々ですが、結果的に開腹手術の決断が間に合って、本当に良かったと思います。
午前1時頃、麻酔から覚めた時、数週間ぶりにゴルビーの鳴き声を聞きました。ゴルビーはこのまま数日入院することになります。ゴルビーが麻酔から覚めてから、我々は獣医を後にしましたが、獣医のスタッフは、次の患畜の手術の準備にとりかかるところでした。そして明日日曜は、朝10時から診察が始まります。