早朝のワインディング。
明らかに減っていて「ああもう交換しなきゃだめだ」と 痛切に思っていたはずのクラッチが
ちょっとハードな走行になった途端に俄然ヤル気を出しているではありませんか。
3速全開から軽くポンとブレーキング
ほとんど同時にクラッチを踏みつけ一旦ニュートラルに入れてからクラッチを離し、スロットルを5/2ぐらい、ぐわんと言わせる。
そして再びクラッチを踏み込んで2速に入れる。クラッチを、 ぱっと離す。。。
踏み込みの足りなかった分だけレブの針がポンと上がりながらエンジンブレーキがググっとかかる。。。ステア。。。
「あれ?3-2のミートが完璧だ。。。??」
もちろん実際にはかなり減ってます。
「そんなバカなことあるかい(笑)」
と思われるかもしれません。僕自身笑ってしまったくらいです。けれども、事実です。
普通、クラッチの減りまくったクルマでこれをやると、相当シビアに回転を合わせてやらない限りオートマチックの様に、ゆる〜いエンブレと焦げ臭いにおいがします。
75TSのそれは、まるで新車の様なミート。
ミッションもその通りで、第一ミッションマウントがヘタってきてトルクをかけると「ドン」とまではいかなくても例の音が出始めるしほとんど嫌気がさすほど渋いミッションになっていたハズなのに、飛ばし始めると、もの凄くスムーズで、調子よくスコスコ入る。
いや、そういう言葉にできる事よりも「こうなって欲しい」時に「こうなる」という様な
妙なあうんの呼吸がシフトレバーから伝わってきます。
というか、シフトが勝手に入り始めるといってもいいかもしれません。
だから
曲がりたいコーナーを曲がりたい速度と曲率で曲がれるんです。
人車一体の感覚が簡単に味わえ、アンダーへの恐怖感が一切消え、ラインをクルマが教えてくれる。
どうして、目にも明らかにガタがきているクルマなのに物理的に調子が良かった時よりも
まるで自分の手に馴染むように、しっくりくるんでしょう?
それはまるで、隙間だらけのためにかえって波を上手にやり過ごすことができたコンチキ号のようなそんなのらりくらりとした感触でした。
この体験以降、僕が75に抱いていた違和感はすっかり消え、自在に操れる機会が飛躍的に増えました。
何気ない交差点や郊外の道路、高速道路のカーブ、段差やつなぎ目、そしてワインディング、最近では、その日クルマに乗れば必ずどこかでそういった感触を味わうことができるようにまでなりました。
もちろんこの発見は偶然です。崩した「機械の」調子は元に戻さなければなりません。
けれども、問題は、この体験を75の機械的な調子が万全の時に知ることができたのか?ということ。
たぶん、いや絶対に気づけなかったと思います。
アルファロメオにとってベストバランスというのは機械の状態が万全という意味とイコールではないんじゃないだろうか?
むしろどこか万全ではない、もしかすると他の人にとっては最悪かもしれない、そんな状態ですら、アルファにとってはベストバランスのために大きな役割を、になっている様な気がしてならないのです。。
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