26:アルファは壊れるクルマか(1998/02/10)

 gtv2.0に乗り始めてから足掛け3年が過ぎました。この間、一度も不動になるトラブルやレッカーのお世話になった事はありませんでした。こまめにメンテナンスをしているからという訳でもなく、どちらかというと殆ど乗りっぱなしに近い状態での事ですから、よく脅かされる「アルファは壊れる」というのは、どうも眉唾の様に思います。
 もっとも「壊れる」という事象の定義自体、人によっても違っていて、例えば室内灯がとれちゃっただけでも「壊れる」と思う人にとっては壊れるらしいです。
 それでも、中には「イタ車というのは基本的に不動状態だ」と思っている人も多くいらっしゃる訳で、今だに僕は友人知人から、同じ質問を何十回とされます。
「まだ動くの?大変でしょう、壊れて」
僕は、そこで何十回と、同じ答えをします。
「別に?絶好調だよ」

そうすると、ガッカリしたように「ふ〜ん」
彼等が一体どんな答を期待しているのかは知りません。

 とはいえ、かのようにgtv2.0との蜜月は続きつつも、Alfa特有というよりは「旧車特有」の不都合や我慢を強いられるのも事実です。高速道路やワインディングをフルスピードで駆け抜けられる事と「実用的完調」は違うというのが、実用車としての宿命だとすれば、現代のクルマに比べたらAlfettaはかなり非実用的な状態です。特にパセンジャーにとってはAlfettaの良さというのは殆ど皆無といっていいでしょう。
 例えば内装。Alfettaの悲しさというのは、ちょうどコストダウン化華やかし頃のクルマのために、あらゆる内装部品に旧車の雰囲気も、モダナイズされたデザインテイストも皆無だという事でしょう。味わいどころか品質の悪さがモロに出て、シートに座ったとたんにガックリ来るというのは一度や二度ではありません。 次に、時々起きるアイドリングの不調。結局これの主な原因はキャブの寿命だという事は分かりましたが、都内の渋滞や長距離ドライブでは、これが身体にかなりの疲労を伴うことになり、帰宅するとグッタリする事もしばしばです。
 そこである日、僕はセンターマフラーの交換を依頼したついでにgtv2.0の大修理(実用化)を決心し、その見立てを主治医に頼みました。そしてこの事が、数ヵ月に及ぶ僕の長い苦悩の始まりになるとは思いもよりませんでした。

「悪いところをこの際全部直してしまいたいんですけど」
「う〜ん。新車の7割復活っていうなら車検の時にやる範囲で大丈夫だよ」
「だいたいどの位かかりそうですか?」
「ざっと見回しただけでも60〜70万かな」
「あ、そうですか(なんだ、結構安く上がるなあ)」(完全に感覚がイタ車モードになっている)
「そしたら10年乗れるよ。あとはボディが落ちるまで乗ればいいさ」
「あ?いや、そうじゃなくて。できれば外板や内装のリペアもこの際やってしまいたいんですけど」
「う〜む。。。。いや〜ボディは朽ち果てるまで乗った方がいいと思うよ」
「な、何でですかっ!」
「レストアというにはおこがましいけど、カッチリ仕上げると、最低でも300万はかかる」
「..........」(冷や汗)
「でね、105系以前ならそれでもいいけど、Alfettaはね、売るときに金かけた分評価してくれないよ誰も」
「...でも、僕はトランスアクスルが好きなんです」(意味不明)
「そりゃ分かるよ。でもまあ、本当にその投資価値があるかどうか、もう一度考えてみて」

 主治医がAlfettaのレストアを勧めないのは、単純に僕の「買い換え」の事を心配してくれての事でしたが、確かに今乗っているAlfettaが、レストアベースとして如何ほどの価値があるのかは、自分の主観か、市場原理でしか判断はつきません。いくら「一生付き合う」と宣言したところで、いざ「Giulietta Sprint('50年代のアルファの名車)が買える位のお金をAlfettaにかけてもいいのか?」と言われれば、こりゃハタと立ち止まらざるを得ません。
 この日から、僕のAlfetta総点検が始まりました。gtv2.0(Alfetta)は、メカニカルな部分よりもむしろ内外装のヤレが激しく、どうしても見た目や快適さの部分では「淘汰」の部類に入るような状態ではありました。そしてそれは部品の入手状況の厳しさとも相まって、いっそうその深刻度を増していました。世界中でたった数千台しか作られなかったJunior-Zですら、アクリル部品の果てまで手に入るのに、Alfettaの116系、特に後期のものは、ウィンドウレギュレータさえ手に入らない状態なのです。特に致命的だったのは、フロントウィンドウのウェザーストリップが「本国欠品」という状態でした。

僕は半年後に控えた車検を前に、二つの選択肢に迫られる事となりました。
ひとつは、内外装を諦めて乗り潰す。
二つ目は、手放して、内外装のより程度のいいAlfettaを買い直す。

そう、アルファは決して壊れるクルマではなく
「朽ち果てるクルマ」
だったのです。が〜ん。



27に続く