5:誤解は解けるのか(1997/11/13)
 1「錆びる」

 鉄ってのはもともと錆びます。でも1980年代にECの防錆ガイドラインが明確になってからのヨーロッパ車には当てはまらない古い常識になりつつあります。80年代後半のAlfaRomeo75と、同時期の「ハイソカー」の下回りを比べてみれば、いかにアルファが錆びないか一目瞭然です。

 ただ、確実に言えるのは、僕が所有する82年型gtv2.0に関しては、購入前に露天駐車(もしくは保管?)されていたためと思われる数年以内の新しい錆が各所に見受けられた事、そして購入後は(屋根付き駐車場に保管)新たに錆びた部分はないということです。「乗らない時には雨にあてない」クルマの保管なんて国産も外車もそんなもんです。メーカーの防錆保証期間が、だいたい4〜6年ですから、Alfaに限らず、古いクルマにとっては万国共通の定義だと思います。酸性雨のこの時代、雨ざらしにしても錆びるのが嫌ならやはり新車を買うべきでしょう。

2「壊れる」

 個人的な感覚でいうと、アルファはとても壊れにくい丈夫なクルマの部類に入るというのが正直なところです。(マッチングの悪い改造車やカッコだけで乗られてメンテ不足のかわいそうなクルマを除く) 逆に例えば国産であっても「名車」と呼ばれたいくつかのクルマの中には、素材や構造上の問題で、どんなにレストアしても限界走行してはいけないものすらあります。僕もサスペンションを壊してしまった(公道上で)国産車が3台ほどあります。

 そもそも「壊れる」というのは、クルマ好きとそうでない人のクルマに対する考え方の違いに起因する部分が大きいので、一概に決めつけることはできませんが、傾向としては、アルファに限らず殆どのヨーロッパ車は(ドイツ車も含めて)乗りっぱなしにすると動かなくなる可能性は非常に大きいです。

 ベンツやVWにばかり乗っているとついつい忘れがちになりますが、ドイツ車が壊れないのは、ヤナセが頑張って極上のアフターフォローがあって初めて可能になっているという点を無視できません。(ヤナセのメカニックの知識は、それはそれは素晴しいものでした)VWのかつての信頼性がノスタルジーな出来事になるのかと思うと、ちょっとゴルフファンがかわいそうで....。

 現代のAlfa(というよりイタ車)が、初期に「壊れる」という伝聞のほとんどは、僕の知る限りでは電装部品メーカーのせいです。アレーゼのメカの方が今どの辺までそれをクリアできているか分かりませんが、要は、ディーラーのメカニックの方達が系統立てたバグの把握をできているクルマは、ユーザーも気付かないうちに初期不良を早く発見できる(メーカーリコールに至らないバグ)、そういうディーラーに恵まれなかった車は軒並み手の付けられない欠陥車になる場合がある。それだけの違いです。そして概ね、古いアルファは経年変化さえ把握していれば、決して壊れる様な華奢な部分はありません。(内装とプラスチックを除く)

 これは僕の個人的な経験からですが、「最初のオーナーが初期不良を全て潰した中古車は故障しにくい」という事も言えると思います。例えば僕が所有する82年型gtv2.0に関しては、購入直後には一次コイルの接触不良を抱えていました。販売したショップも、時折起きるエンストの原因を突き止めかねていました。おそらく前オーナーも本気で追求せずに放っておいたと思われる形跡があります。が、僕自身がそれを「単なる接触不良」であると突きとめて潰してからは、一切の電気系統のトラブルからフリーになっています。今後その付近のトラブルを避けるためには、とにかく「経年変化」に注意を払ってゆけばいい訳です。(どこかの時点で配線全ての引き直しは必要だと思われます)これもアルファに限らない「中古〜旧車」に対するマナーの域を超えません。一時期の欧車の場合には、それを少しシビアにしてゆく必要があるというだけです。僕の知人の中で、かつて仏車やイタ車のオーナーで、壊れて苦労した人の殆どは、「機械というのはメンテナンスや点検が必要だ」という事を知らなかった故の悲喜劇の主人公でした。それでも1980年代に設計された欧車の一部には、中古を買う場合に気を付けなければならない点がいくつかあるようです。タイミングベルト車の場合は「いつタイミングベルトを交換したか」、AT車の場合は「ATはいつ設計されたもので不具合はどういう修正が行われたか」、新設計のエンジンならば「ブッシュ、パッキン類はいつ交換されたのか」、そして最も初歩的な知識で対処できる一方、そのままにしておくと深刻なトラブルの原因になる「電気系統」です。

3「雨漏りする」

 するのもあるし、しないのもあることでしょう。まあ、雨の日にイタ車に乗らなければならない時は、「自分はまだまだ人生半ばなのだなあ」という励みにもなるでしょう。ところで1990年代初頭までの欧車における弱点は「ゴム製品」であると言われます。僕がかつて乗っていたVWゴルフの窓のウェザーストリップの寿命は約3年でした。当時のヨーロッパ製のゴムは、新品時の密閉性は素晴しいのですが、どういう訳かどれも経年変化が速いのです。最近はどうなんでしょう?



6に続く